紳士的なLady
喉の奥から、沸々と何かが沸き上がってくるのを感じながら、私はただ冷静になるよう、言い聞かせる。
「鞄を取りに来ただけ」
「悪い?」とか、挑発的な事を言ったらお終いだ。
私から彼に喧嘩を売るような真似だけは、絶対にしたくない。
私は、彼の前を通り過ぎて、自分の机の横に掛けてある鞄を取るだけ……。
ガッチャン。
あれ?
鞄が取れない?
「おかしい」と思った私は、すぐに机の金具部分をしゃがんで見る。
元々古い所為か、金具が壊れて、鞄に絡まっている。
嘘でしょ?
1人なら、盛大に音を立てて、鞄と金具を壊して取るだろう。
でもそれが出来ない。
架月が居るし、やけに音を立てて外すのも見っとも無い。
どうしよう?!