紳士的なLady
油断しちゃダメだ。
今から、もっともっと、気を引き締めないと。
眉間にしわを寄せ、緩んだ口元をキュッと締める。
と。
「剣ちゃん、お疲れ様」
ちなみが、にっこりと笑ってタオルを差し出してくれた。
「ありがと」
私もふぅ、と息を吐きながら、タオルを受け取る。
あれから千波の身には何も起こっていない。
本人も鈴音も、安心したようだけど、それが逆に危ないのだ。
試合当日になって、何か仕出かすのかもしれないと、考えておかなきゃいけない。
「只今から、休憩時間とします」
そのアナウンスだけ聴き取って、私は重たい足取りで階段を上る。
「剣ー!おつかれっ!!」
応援席には、鈴音が手を振っている。
「剣ちゃーん!!カッコ良かったぜー!!」
あ、小野寺も……。
「ほーらっ!玲佳も!」
架月まで来ている。
「お疲れ」
「うん」
……応援、来てくれたんだ。
嬉しい。