紳士的なLady
こんなに応援されて。
「剣ちゃん」って、名前も呼ばれて。
後輩からも慕われて。
「ありがとう。皆」
その言葉を、いっぱい言いたくてたまらなかった。
しかしそう言った直後。
「つーるーぎー!!次決勝戦ね!おめでとーう!」
甲高い声で、私の名前を呼ぶ声が一つ。
「……お母さん」
ああ……。恥ずかしい……。
ただでさえ、この名前でちょっと引かれてるのに、この母親が来たんじゃもう……。
「皆応援ありがとうございますー。剣も、ちゃんと皆にお礼しなさい」
そう言って、私の頭をガシッと掴み、90度に曲げさせる。
痛い……!
私より小柄で、どちらかと言えば剣道とは程遠い外見のお母さん。
実際は、私よりも力が強い。
「ちょっと……!そろそろ起こして……」
ぐぐぐ、と腰を無理矢理起こそうとすると。
「母さん、そこらへんで止めとけよ」
剣夜兄がお母さんの肩を掴んで、やんわりと止めさせる。
何で、剣夜兄まで?
暇なのかな?