オモイビト


いつも通りの日常。


ちょっと、あの時が特殊だっただけ。

今はもう、関係ないじゃない。


「おはよう昴」

「おはよー」


あたしは元気。

元気だから大丈夫。


もう、あんなことはないから――……分かってるけど、怖くなる。

変わりたくない。

変わられたくない。


でも、それはやっぱり不可能なことなんだ。


廊下を歩いていると、すれ違い様に聞こえた。


「……シロナ……」

「え……?」


……しまった、反応してしまった。

陽紀からあれほど『城那』と聞いたら逃げるように言われてきたのに……。

……今からでも逃げる?


「気になるならおいでよ」

「……」
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