春も嵐も
会場に到着すると、ちょうど親父は台に登ったところだった。

頭にはちまきをして、はっぴをきた親父の姿はまさに祭りの男である。

親父の前には大太鼓があった。

ばちを片手に、親父は大きく深呼吸をした。

その光景を俺と弥生はチョコバナナの屋台から見あげていた。

「親父」

俺が手を振って声をかけると、親父は気づいたと言うように視線を向けてきた。

少しだけ、親父が眉を動かしたのがわかった。

ヤベ、マズかったか?

そう思って、俺は振っていた手を下ろした。

始めようと思って集中してたんだよな。

その邪魔をしたことを俺は反省した。
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