春も嵐も
「何が?」

そう言った弥生に、俺は聞き返した。

「お父さんに名前を呼んでもらったうえに、手を振ってもらえて」

「俺、息子として認められたのかな?」

俺が言ったら、
「さあ、それはまだわかんない」

弥生はそう返事をすると、親父に視線を向けた。

ドンドコと、太鼓の音が腹に響く。

その音を鳴らしているのは、親父である。

俺を息子として認めてくれたのかは、まだわからない。

周りの目もあったから、仕方なく手を振って名前を呼んだのかも知れない。

そもそも本当に血が繋がっているのか、それすらもまだよくわからない。
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