愛乗りシンドバッド
「ふーん、がめついやつ。
じゃああそこに浮かんでいる
お気に入りの金貨をやろう。
めったに人に
やったりしないんだが、
……まぁ仕方ない。特別だ」

と、そっぽを向いて
夜空の丸い月を指差し
苦渋の選択を演出するハルだが、
逸らした顔の後ろからでも
ほっぺたが
膨らんでいるのがわかって、
明らかに笑ってねえかこいつ。

「……ほお。
あれが金貨だってか。
じゃあ悪いけど
取っていただけますかね。
俺にゃ手が届かないもんで」

俺がそう返すと、

「ふぅ〜、やれやれ。
最近の若者は仕方ないんだから」

とか言い、
むしろ俺のその言葉を
待っていたかのように
ハルはしたり顔を見せて
空中に手をかざすと、
「よっ」とか「ほっ」とか
言いながら
月と重ね合わせた手のひらを
なにやら動かす。

すると何もないように
見えたはずの手のひらの隙間に
黄色く光るものが現れ、
たちまち月と同じような
1つの金貨が出てきた。

「ほれ」

……うぐ、華麗な流れである。
ちょっと意表を
衝かれてしまった。

さてはいつか
きたる合コンに備えて
練習してたな。
< 140 / 188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop