白色スケッチブック
1.

おもかげ

「やばっ、忘れ物!」

夕方の学校の廊下をばたばたと走り抜けるのは私・端本知夏(はしもとちなつ)。
今年中学生になったばかり。

「ええと、えと、教室ここだよね??」

まだ中学校生活にはあんまり慣れてなくて、教室の位置も半信半疑。
少し息を切らせながら、教室のドアに手を掛ける。

ガラリ。

ドアを開けると、薄暗い教室と、そこに差し込む夕日の光が目に入る。
そして、机に寝そべる人の姿も…。

「え、誰!?」

びっくりしながら私は歩を進める。
あ、この人…、私の後ろの席の人だ。
名前は確か…

「松井由樹(まついゆうき)…?」

「………」

本当に寝てる。
コレ、起こした方がいいのかな…。もうすぐ学校閉まっちゃう時間だし…。

私だったら、どうして欲しいかな。
ここで寝るくらいだったら相当眠いんだろうし
でも、ここで放っておいて朝になってたり…とか…。

「よし。やっぱり起こそう。あ、その前に机の中に忘れた教科書を…ん?」

私は寝そべる松井の下敷きになっているリングノートを見つけた。
リングノートは開いていて、近くにBの鉛筆も転がっている。
そして、机の端と下には、消しゴムの消しカスが落ちていた。

「…なに書いてたんだろ」

ていうかこのリングノート、妙だ。
よくみると一枚一枚が少し厚くて、おまけにノート特有の横線が無い。
……落書き帳?

気になるな。起して、見してもらおう。
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