白色スケッチブック
「ヤバっ!ていうか、松井の所為じゃん!起きないからさぁ…!」

「ごめん。マジ眠くて」

松井は困ったように笑い、鞄を手に荷物をまとめ始めた。
私は予めまとめておいたスクールバッグを持って、教室のドア付近へ移動する。
あとから松井も慌てて移動して、ふたりで廊下へ出る。

…会話が無いなぁ…。

私口下手だから、何話したらいいのか分かんないし…。
きっと退屈な奴、って思われてるんだろうな…。
なんか言った方がいいのかな…

「ねぇ、もう時間ヤバいし、走んない?」

「ああ、そうだな」

小走りに廊下を走りぬける。
下駄箱で靴に履き替えて、校門まで急ぐ。
校門には先生らしき人がいて、丁度校門を閉めようとしていた。

「や、まって先生!!待って待って!!!」

松井が手を振って先生の動きを止めさせる。

「遅いぞ、まだいたのかふたりとも」

「私は忘れ物を取りに…」

「なるほど、で、お前は?」

先生が松井に顔を向ける。
松井は答えにくそうに「寝てました」と呟いた。

「はぁ…、もういいから帰れ。気をつけてな」

先生は深いため息をつき、呆れながら帰って行った。

「松井、私こっちの道なんだ。松井は?」

「俺もそっち。…途中まで駄弁るか!」

松井は普段のテンションに戻り、ニコッと笑いながら歩き出した。
さっきのは、寝起きだったから、って事…?

「あ、そだ。」

突然松井は、私に視線を寄越してしゃべりだす。

「俺の事は、由樹って呼べな!ほら、うちのクラス、松井って姓の女子いるだろ?だから、俺の事は『由樹』な!」

「え ああ、うん。」

「よし!」

松井…いや、由樹は、ニカッと笑って満足そうにうなずいた。


思えばこの時からだったのかもしれない。いや、これよりももっと前かもしれない。
私は気付かないうちに、由樹にひかれ始めていた。

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