文系男子。

[久留米]

「…でな、最近の学生が読む小説っつたら酒、タバコ、ドラッグ、バイオレンス、セックスが当たり前に出て来る訳」

「…はあ」

「俺は読むなとは言ってない。だけどそういったのを安易に書籍化だかすんなってことを言いたいの!」

「………おお」

「大体頭の悪い文ばっかで困るんだよ!ロクに調べてねえような差し障りのない表現だけで読者を引き込めるか?セフレもいねえ様なガキんちょにセフレの話が書けるか?!妊娠の経験もねえヤツに簡単に堕ろすとか流産とか書かせんなよ!なあ?」

「…おい」

「あ?」

「それは言い過ぎじゃないか?」

「そうか?」

「好きで文を書いてるんだよ。お前だって自分の書いた物を否定されるのは、嫌だろ。それに、文は書けば書くほど上手くなるからね」

お前も何時か抜かれるだろうな。

俺の目の前で熱弁を繰り広げていた男はシュンと元気を無くした。
だが、しばらくすると、グシャリと音がして、右手に握られていたビールの缶が潰れた。

「絶対、縦書きでデビューしてやる」

頬を赤く染め、何故か俺を睨むのは、誰がどう見てもただのオッサンだ。

「センスはあるのにねえ…」

「あ?人間がなってねーってか?」

どうもこいつは酒癖が悪い。

「…それもある」

「もってなんだよもって」

「あーもう店仕舞いだよ。帰った帰った」

完全に酔ったこいつは、俺の店の常連だ。

「そんな事言うな。一緒の釜で飯食った仲だろ」

「あんたが一方的に居候してただけな気がするんだけどねえ」

苦笑すると、ロワが欠伸をした。
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