文系男子。

[真朱]

神経質そうな男が目の前に座っている。
男は、四方田(ヨモダ)と名乗った。

「…元気そうで何より」

「当たり前だろ。俺が面倒見てたんだから」

ジョーヴェが自信たっぷりに言った。

「お前の事だから手を付けるんじゃ無いかと思ってヒヤヒヤしたよ」

うわ、凄い嫌味。

「ああ、一回イイトコまで行ったんだが、フられちまったよ」

煙草に火をつけ、ジョーヴェはニッコリと笑って見せた。

「面白いな。いつもは強引にするくせに」

「あれえ、どうしてアンタが俺のジョウジの事知ってんの?間違えて掘ったっけ?」
「勘弁してくれ。俺は同性愛者がポリ公より嫌いなんだ」
「一回やればハマるかもよ?」
「いや、虫酸が走るね。相手がお前だったら余計に」
「んなのこっちから願い下げだ。そんな魚の骨みてえな身体、抱いた所で何の面白味も無えよ」
「誰が何時抱かれるだとかーーー」

「…ねえ、もう満足した?」

スゥイーノの一言で2人が黙る。

「顔を合わせる度に皮肉言い合うの止めて頂戴。聞いてて疲れるわ」

全く同感。

「で、何で呼んだワケ?」

ジョーヴェが煙草の煙を吐きながら聞いた。

「人質の安全確認と、場所の移動」

「何で移動すんだよ」

「俺も知らん。上からの命令だ」

「あ、そ」

興味無さげに答えたジョーヴェに、四方田の視線が突き刺さる。

「…くれぐれもばれないように」

「はいはい」

「国際指名手配犯をウチが匿ってるなんて広まったら、困るからな」

「誰も知らねえだろ。そこの嬢ちゃん以外」

煙草であたしを指すジョーヴェ。
四方田が視線を向ける。

「…名前教えたのか」

「俺に名前なんざ無え。とうの昔に捨てた」

「…」

「それともあれか?ラッキー・ルチアーノとでも名乗れってか?」

「…は?」

四方田が聞き返すと、ジョーヴェは舌打ちをした。

「わかんねーのかよ。これだから…」

あーあ、付く組失敗したかなあ。

大きな声で言うと、四方田が睨んだ。

「…好きにすれば良い」

「好きにしていーの?」

ジョーヴェは不敵に笑って煙草の火を揉み消した。
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