文系男子。
[竹之内]
「…leccacazzi(バカな男)」
誰かが、ぼそりとイタリア語で呟いた。
「おい、まそ……」
教室に入ると、真朱が、男に後ろから羽交い締めにされていた。
男の紅い眼が暗闇にぼんやりと浮かび上がっている。
首にぴたりとナイフの刃が押し当てられていて、俺は動けなかった。
「Buonasera(こんばんは),signore(お兄さん)」
「…日本語喋れるんだろ、ジョーヴェさんよ」
直感的にこいつがジョーヴェだと思ったので言ったが、男は笑っただけだった。
「なあ、竹之内」
いきなり日本語になった。
「なんだ」
「こいつが好きか?」