文系男子。

人質


[阪本]

「だああぁあああああっからてめーは!!」

車の中でこんなにデカい声を出す日が来るとは思って無かった。
ウチの組の上司であり幹部の丁子は俺の怒鳴り声を何食わぬ顔で受け流すと、丁子の隣に座る女の子に向けて、一言断ってから、窓を開け、煙草に火をつけた。

「おい聞いてんのか?!誘拐なんてしたら簡単にポリ公にパクられんだろうが!」

「茜」

バックミラー越しに丁子が笑っているのが分かる。

「誘拐じゃない。ちょこっと協力してもらうだけだ」

「…了解を得て連れて来ましたってか?良いよなあ、それで簡単に問題解決か…って犯罪ギリギリじゃねえかああ」

俺が言えば、丁子がうるさいと言う。

「だいたいその知り合いに聞いたところで分かる訳ねえだろ」

もっと言いたい事があったが、女の子が身を硬くしたのを感じて、声のトーンを落とした。


  
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