文系男子。

竹之内の部屋の前に立ち、松葉はドアホンを押す。

何度も押すが、出てくる気配は無かった。
松葉が何処かに電話をかける。

「…居ない、な」

かけ終わると、あたしの方を向いた。

「此処に住んでる人と、どんな関係?」

身内?

女?

「…いえ、ただの、知り合い、です」

「そっか…」

此処の人に、会いたい?


あたしは何故か此処まで来たら、絶対に会いたいと思っていた。


「はい。一瞬で良いんです。謝りたいんです」

松葉は、芯の強い子だねえ、と眼を細めて笑うと、付いて御出で、と言って、元来た道を戻り始めた。


  
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