最後の天使


「かしこまいりました。ペアで?」


「いえ、片方だけで」


俺が気まずそうに言うと
女の人は少しも笑顔を崩さずに
白い手袋をはめて
指輪を取り出した。



「こちらでよろしいですね…サイズは、おはかりいたします?」


そう言って山本の方を見た。

店の人は
俺たちをカップルだと勘違いしているらしい。


「あ、彼女じゃなんですよ。ついてきてもらってるだけで…」


「申し訳ありません!…ではサイズなどはお分かりでしょうか?」


「8号で」


「かしこまいりました、只今用意します」


そう言って
女の人は奥の方へ入って行った。


「あってよかったですね」


「そうだな」



山本は嬉しそうに俺を見て、
横にあったネックレスコーナーや
ピアスコーナーを見ていた。



「お客様、ではこちらの指輪でサイズ9号が、お値段こちらになります」


そう言って女の人は
電卓を出し、
俺はその文字をもう一度確認してカードを出した。


「一括で?」


「はい」



カードを使うのは
いくつになっても緊張してしまう。

俺は戻ってきたカードを
急いで財布にしまった。
< 63 / 115 >

この作品をシェア

pagetop