最後の天使
「隆二…隆二くん」
俺は懐かしい声に
呼ばれ、明るい日差しに目をひらいた。
「おはよう、隆二君」
「うん、おはよう美紀…」
つないだ手は
離れた様子もなく
今もつないだままだった。
「隆二君、私あと1時間で、検診の時間なの。その間…何してる?」
「あ~…とりえず家に帰って、服用意してくるわ」
「そうだね、今日土曜日でよかった」
「ほんとだ」
俺はそう言って笑うと
美紀の頭をポンポンと撫で立ち上がった。
鏡を見て寝癖頭と
昨日の洋服のままだったと気づく。
なおさら、家に帰んなきゃな…
「美紀、ちょっと早いけど帰るな。これナースにみられちゃ、病原菌と間違えられちゃううしな」
「ふふ…わかった」
痩せてこけた頬を少し上げて
彼女はほほ笑んだ。
俺は美紀に手を振ると
少しの量の荷物をポケットに詰め込んだ。
通りすがるナースは
やはり俺を“病原菌”の目で見る。