籠の鳥
「分かってる。」

素っ気なく答えているとやつはは俺の肩を掴んで少し俺を振り向かせた。

「何だよさっきから!俺は親切で言ってるつもりだけど!?気に食わないことでも言ってるか?!」

「…別に」

「…っ」

何を言ってもそっぽを向かれて、やつはは俺からぐったりするさやを奪った。

「あのなぁ、僕はずっと独りで妖怪退治してたけど、もし仲間ができてたら大切にしてたと思うよ」

振り返りざまにそう言い捨てて歩いて行ってしまった。


さやは、そんなヤワな奴じゃない。

今はぐったりしてるけど、ここを出る頃にはピンピンして俺にちょっかいを出してくるんだ。

だから今は…


「…くそっ」

自分に何を言い聞かせても、何も誰かのせいにはならなかった。


剣があれば、俺はさやを助けられただろうか…?

その問いは答えが出る前に消えた。


助けられてない。

そんなこと、もう最初っから分かってる。

もし助けられていれば、さやはあんな風になってないんだから。
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