籠の鳥
立ち上がり僕の手を掴んだ男に慌てて抵抗した。

男は僕を見下ろす。

「…家だ」

「家??」

「ああ、家だ」

いまいちパッとしない僕は少し考えた。

「僕の、ですか?」

「ああ、まだらくんのだ」

「さあ」と手を引くのに立ち上がったが、脚を踏ん張った。

「行こう」

「それは、僕の家ではありません」

「知っている」

「…」

複雑な心境におちいっていると男は話出した。

「君は村を出る前に自分の家を焼いているね。自分が村に帰って人々を傷つけないように。でも今から行く所は確かに君の家だ。"実家"、とでも言った方がいいか?」

「実家…!?」

僕は驚いて聞き返した。

男は満足そうに頷く。

「まだらくんのお母さんが待ってるよ。行こう」

再び手を引く男の手を、今度は振り払った。

男は"またか"というように振り返る。

「…僕の両親は死にました。今はもう、この世にいません」

「生きているんだよ。あの時死んでいなかった。どうしてだか、分かるはずだよ。どうして、君はそんな外見なのか……」

それを言われて僕は自分の手を見た。
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