籠の鳥
マオの言葉にやっと2人が反応した。

「何言ってるんだよ!?また帰ってくればいいだろう?!俺達のとこに!」

「ざっくん、まーくんはママのところに帰るんだよ?それ以外に帰るとこなんてない。分かっているだろう?」

「…………」

答えないざくやを無視してマオは僕に向き直った。

「1人で行けるね?」

「はい。今までお世話になりました。皆さんとの旅は、一生忘れません」

そう言って洞窟の入り口に向き、ざくや達に背を向けた。

「さようなら」

「ありがとう、まだら」

歩き出そうとした時、ざくやは言った。

「お前のお陰で、俺はさやを守れた。俺は、目の前の事にとらわれ続けていた。剣が大きくないと、家族も村も背負いきれないと思っていたんだ。でもまだらに教えてもらった。"覚悟"は物で支えるものじゃなくて、心に刻むものだということを」

それから悲しみを吸い込むようにざくやは大きく息を吸い、静かに言った。

「もう1度言わせてくれ…ありがとう。また、会えることを願っている」

そこまで我慢して聞いていたが、ざくやの言葉を最後に僕は走り出して洞窟を飛び出した。



唇を噛み締めても止まらない、雪を溶かす温かい涙を頬に伝わせて―…。
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