籠の鳥
やつはとは逆の方向に足を進めた。







寒い森の道を、まだら温かい狐の背に乗って走った。



しがみつくようにして乗っていたが、身体を起こす気にはなれなかった。

「ついたよ。姫の城だ」

止んだ風と共に聞こえたフォルコの声で顔を上げた。

そこには薄暗く建つそこそこ大きい館。



僕を降ろしたフォルコは人間の姿に戻った。

「姫は人間が嫌いなんじゃないんですか?」

暗く嫌みっぽいことを言う。

フォルコは何食わぬ顔でさらっと答えた。

「姫は妖怪に味方する人間は大好きなのだよ。こっちは思う存分利用するだけだからね。その無知で愚かな人間を見るのを楽しんでいる」

話しながら歩き出すフォルコにまだらは早足で追いついた。

「まだらくんも、姫に会うんだったらもっと愛想よくしたほうがいいよ。仲間と離れたことは…「分かってもらいたくないですから、別に気にしなくていいですよ」」

振り返るフォルコとは目を合わせずに俯いていた。



しばらく長い道を歩いて館の中に入った。
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