籠の鳥
「僕の大切な人、あそこにいるんだ」



まだらの指差した方を女は見た。

まだらは俺に笑顔を向ける。

「母さんも大切だけど、あの人も僕の大切な人なんだ。他にも、はぐれた仲間が全員そう。…どっちか選んでって言われても、選べないほど……」

そしてそっと女の手をとった。

「和解、してくれない?ざくやは悪い人じゃないよ。人間と妖怪はきっと分かり合える、母さんと父さんだってそうだったでしょ?」

「……………」

俺は呆れてしまった。


今まで人間を憎んできた妖怪が、人間を許すわけがない。

下手をすればまだらも……



しかし女は微笑んでまだらを包み込んだ。

「よかろう」

「!?」

「本当!?母さん!」

まだらの目が輝いた。

女はそっと頷いて立ち上がった。



こちらに歩いてくるのが見え、俺は剣を構えた。
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