籠の鳥
真っ直ぐに女を見て微笑む。



「愛してるよ、母さん」



「"愛してるよ"」



女の中であの人とまだらの姿が重なった。


「やはり……彼の子なのだな…」


女の頬に涙が伝った。



そして涙と共に笑みがこぼれた。

やけくそな、そんな投げやり感のある笑み。

「人間も妖怪も、憎い……」



妖怪の姫と謳われた女は、自分の感情を騙したまま、息を引き取った。



まだらは握っていた手をそっと置いた。

「まだら……」

「ざくや…喜んでよ……悲しむ為にやったんじゃない」

床に落ちている丸い水滴、俺はそれを見逃さなかった。

何も言わずまだらに歩み寄って、強く抱き寄せた。



女を殺した小さな身体が震えていた。
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