籠の鳥
「フウ、よしなさい。そうさ、種は死んだ妖怪さ。それに人間の皮を被せた」

「人間の皮!?」

「ああ、数年前のね。まだ彼女が生きている時にオジサンは恋をしたのだよ。だが、そんな彼女を守りきれず、この妖怪に殺されてしまった」

マオはフウの胸骨を指でついて言った。

「だから妖怪を殺さずに長年の研究を経て虎猫を完成させた。お陰でこの通り、彼女を奥さんにする夢は叶ったわけだしね」

「酷い話だな。愛したやつを妖怪にするのか?」

「違うよさっちゃん。妖怪を失った愛人(ひと)にしたのさ」

「だから最悪だなって」

さやが言うと突然フウはマオの腕をすり抜けてさやに飛びかかった。



さやも即座に気付いて飛び乗ってくるフウを掴んだ。

「マオ様を貶す者は許さない」

「さや!」

僕は叫んだが、フウは退こうともしなかった。

マオが笑いながら言う。

「こらこらフウ、やめなさい。オジサンの大切な客だぞ?」

そう言うとすんなり身を引いた。
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