籠の鳥
マオはざくやをまじまじと見た。

「なんだよ?」と嫌に見返すざくや。

「いや別に。そうか、既にざくやには奥さんがいるのか」

「…………………。そうだよ、もう奥さんがいるよ」

否定がめんどくさくなってざくやは言った。

マヤは部屋を出かけて振り返る。

「実はね……いるんだよ」

「何が?」

ざくやが興味なさげに訊き返した。

薄笑いを浮かべながらドアをより開ける。

「オジサンの…………………………………奥さん」

「「「…………は??」」」

ついに僕も言ってしまった。



そしてドアの向こうから現れたのは綺麗な女の人だった。

長い黒髪が靡いて、目はルビーのように赤く光っている。

無表情で会釈をした。

「紹介するよ」

マオがその女の人の腰に手をまわし、部屋の中に押し入れる。

「虎猫(フウ)だ」

フウは別に何をするでもなくマオに寄り添っていた。

さやは臭いを嗅いで気付く。

「………妖怪か」

フウはさやを見下ろした。

さやも睨みをきかす。
< 54 / 193 >

この作品をシェア

pagetop