籠の鳥
「別にどうだっていいだろ?」と顔をしかめて僕から耳を遠ざけた。

「"妖の目"は妖怪しか見えないんだ。複雑なとこに隠れてても見つけ出す。だから昔噂がたったんだ。隠れても無駄、逃げるしか道はない。それほどあいつは妖怪狩りに尽くしたんだ。ただの興味本意でな。あの眼鏡は細工がしてあって、右レンズは普通の遠視用だが、左は人間が見えるようになってる。例の"母国"からな。だが突然妖怪狩りを引退した。何故かは本人に訊け。取り合えずはな、それだから怖いんだ。あいつには何の障害物もなくさやが見えている。いつ殺られてもおかしくない」

震えるようにさやは俯いた。



それを見て僕は考えた。
それしかたどり着かない結論を言う。

「マオは…大丈夫ですよ。さやを殺したりしない」

「‥何故そんなことを言える?」

「だって、殺すんだったらとっくに殺してるんじゃないですか?それにほら、さやのことあんなに可愛がっていましたし」

唖然と僕を見てからさやは笑った。

僕は呼びかけるとさやは僕を見る。

「やっぱりお前には分からないなって思っただけ。お前も一応妖怪だ、背中には気をつけろよ」


僕の肩に手を置いて、伸びてしまった距離を急いで走って行った。

咄嗟の行動に、僕も慌ててついて行く。



前にいたざくやとマオは、そんな僕とさやを見て笑っていた。
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