籠の鳥
青年が食べ終えて、腹ごなしをしながら俺は青年に訊いた。

「名はなんと言うんだ?」

その問いに青年は笑顔で答えた。

「まだらと申します」

「まだらか、よい名だな。俺はざくやだ、こっちは黒狼のさや」

「ざくやさん?」

「いいさ、呼び捨てで構わん」

汚れたコートを見て、俺は疑問を投げかけた。

「旅をしているのか?」

さやは近くの木に登って、枝の上で昼寝を始めた。

まだらは苦笑いをして答える。

「はい…もう2年は家に帰っておりません」

「そんな若いのに1人旅か…両親は心配しないのか?」

「両親は、幼い頃に死にました。幼かった僕は両親の死が理解できず、覚えていないのです。村の人も教えてはくれずにここまで生きてきてしまいました」

コートを握り締めながら笑顔を作っている。

「何故1人で旅をしているのだ?どこへ向かっている?」

「…それは………っ!」

突然青年は顔をしかめて耳を塞いだ。

「おい…?」と声をかけていると、さやは木の上で遠吠えをした。


くそ…こんな時に…!


動きそうもないまだらに声をかける。

「まだら、ここを離れるぞ!もうすぐここに妖怪が…」

「やっ!!!!」

まだらに触った途端、まだらは俺の手を払った。
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