籠の鳥
「ご兄弟か何かですか?」

まだらの質問にやつはは静かに首を振った。

「違うよ。恋人とその僕達の子供さ」

そして握り飯を八つ当たりするのように頬張った。

「まだ縁は結んでなかったが、彼女の腹には僕の子供がいた。だが出産間近になって、俺が仕事から帰ると彼女は血の海の中に腹を割られて死んでいた。中に子供がいなかったがきっと食い殺されたのだろう」


口に飯を押し入れて舌打ちをした。

「酒が飲みてぇ」

「だそうだよ。行っておいで、ざっくん」

「んで俺だよ!?」

机をバンッと叩いて反論した。

「誰が。」

「さっちゃんがついても?」

「余計行かねぇよ」

次はさやがへそを曲げ始めた。

「それじゃあさやが行く!こんな分からず屋と夜まで一緒にいられるか!!金!!」

マオから金を受け取って俺から顔を背けて、足を引きずりながら出て行った。

するとやつはは立ち上がった。

「あいつ怪我してんじゃねぇか」
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