先生との恋☆Second・Story☆完結☆
張り上げた声がやけに大きく室内に響く。


ポロポロと涙が零れ落ちていくけれど、


あたしは高橋から目を逸らさない。


―――逸らしたら、負けだと思ったから。


「……泣かないで」


高橋は困ったような顔をして零れるあたしの涙を拭おうとする。


それをいやいやと首を振って拒む。



「どうやったら分かってもらえるの…?」

このぐちゃぐちゃな気持ちを。

自分が元々気にしていたことや言われたこと。

高橋に言われたこと。

話たいことはいっぱいあるのに、何から言えばいいのか、なんて言えばいいのか。

高橋に会ってない間に何度も考えたことは何一つ綺麗な文章になってくれない。

これじゃ全然高橋に伝わってくれないと分かっているのに。

伝えたいと思うのに、伝えることができず悔しさから涙がただ零れるだけ。

へたくそな言葉が、吐き出すように断片的に言えるだけで。


別に高橋に聞いたわけでは無い。


零した言葉は、静かな室内にすぐに消える。


ずっと鼻をすするあたしに聞こえてきたのは、

はぁと息を吐きだす高橋の呼吸。

すっと後頭部を抑えられて


そのまま高橋の肩に顔を押さえつける。


言葉にしなくてもあたしのこの思いが高橋に伝わればいいのに。


そう思いながらぎゅっと高橋にしがみつく。

「…本当、どうやったら分かってもらえるんだろうね…」


ぽつりと、高橋の声が届いてきたのはそれからしばらく経った頃。


熱い高橋の体温を感じながら黙って耳を傾ける。


きっと、こうして体を起こしていることさえ今は辛いのだろう。

それでも、抱きしめられた力は弱まらない。


「僕だって心のこと全然分かんないよ。手術したって罪悪感だけで付き合う訳ないでしょ…?」


言い聞かせるように落とされる言葉。


「それなら僕はどれだけの人と付き合わないといけないの」


「……それは、あたしが傷を、」

< 290 / 382 >

この作品をシェア

pagetop