先生との恋☆Second・Story☆完結☆
気にしていたから。だから。
「たったそれだけで、付き合おうなんて思う男に見える?」
熱に侵されている割に、ハッキリとした言葉があたしに向けられる。
「たったそれだけって…」
じゃあどうして。意地っ張りで、素直じゃなくてただの高橋の迷惑でしかなかったあたしが、高橋に好きだと言われる理由が見つからない。
そこまで考えて。やっと分かった。
あたしには、自信がないんだって。
強がるくせに、本当は。
須藤先生のしっかりと自信を持った態度を、自立して高橋と対等にいれる地位を。
神田さんの真っ直ぐに高橋にぶつける素直な行動力を。
あたしは持っていないから。
「聞いて、心」
ゆっくりと落ちてくる言葉にいやいやと首を振る。
こんなあたしの、どこがいいって言うの―――?
聞きたくないと思うけれど、高橋は抱きしめた腕を解放することなく続ける。
「――初めて会った時から、心はどんなに苦しくてもできるだけ我慢する子だった。
苦しくても僕には言わない。
仮病も…まぁ、ふざけて使うときもあったけど、本当に苦しいときは我慢する子だから。
…だから…
だから…ほっとけなかった」
本当に苦しいときは。
弱いところを見られたくないってあたしの強がりに、高橋はいつから気付いていたのだろうか。
高橋は最初から見抜いてたのだろうか。
「それに、僕は申し訳ないことをしたとは思うけれど、手術したこと自体に後悔したことは1度もないよ」
ふっと笑った高橋に、空気が柔らかくなる。
ゆっくりとあたしを引き離した高橋は、その手をあたしの襟へ…
「っやだ、」
止めようとしたあたしの手なんてなんともならない。
てっきり傷を露出させられると思っていたのだけれど、襟に指先をひっかけるようにした後、流れるように胸の真ん中へと指先は置かれた。
「…こうしなきゃ、心はここにいなかった」
静かに、だけど低く。言われた言葉に、胸へと落としていた視線を高橋に向ける。
真っ直ぐと落とされた視線はあたしの顔ではなくまだ胸へと落とされていて。
手術を、しなければ…。
「分かって、心。こうしないと、僕たちが一緒に過ごすことも、笑いあうことも、こうして……喧嘩することだってできなかった」