雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~
「陽介は本当に動物好きだな。大学も行ってバイトもして。世話をする暇なんてあるのかな」


冷蔵庫を開けながら話す遼へ、一瞬言葉を返すのを忘れる。


「……あ、そうだよね。世話をしてくれる女の子でもいるのかな」


私はソファに戻り、メールを返すのに集中するフリをする。

彼に近づきすぎた……。


あの日遼にキスをされてから、私はどこか変だ。

遼のことは兄のようにしか思っていなかったはずなのに。


今は陽介のような男友達というわけでもなく、普通に異性として彼のことを見ている。

そんな自分にショックを受け、アイスティーを運んできてくれた遼と目を合わせることができなかった。


ガラステーブルにコースターが置かれ、その上にグラスが乗せられる。

アイスティーに浮かぶ氷がカラリと音を立て、シンとした室内に響いた。


「紗矢花。今日は静かだね」


リビング中央のソファに座り、遼はじっと私を見つめる。


「……そう?」


私は視線を彷徨わせ、焦って話題を探す。


「そういえば。お兄ちゃんが言ってたんだけど、遼ってホントは彼女いないの?」

「――え?」

「前は彼女いるって言ってなかった?」
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