雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~
紗矢花を降ろしたあと、そのまま向かった先は彩乃のマンション。
彩乃と知り合ったのは、大学時代の友人の繋がりだった。
「遼……遅い、待ちくたびれたよ」
リビングに入るなり、彩乃は俺の腰に腕を回し強く抱きついてきた。
棚の上に飾られた時計の針は、もうすっかり深夜を示している。
「ごめん。さっきまで来客があったから」
「もしかして……あの子?」
「……まあね」
俺の手は彩乃の長い髪を撫でているのに、心はそこには存在しない。
彩乃の唇を首筋に感じながらも、紗矢花の潤った柔らかな唇と重ねていた。
*
紗矢花を中途半端に知ってしまった自分の体はもう、彩乃では満たされなくなっていた。
ベッドの上で仰向けになり天井を見上げる。
ただ虚しさが残るばかりで何も癒されない。紗矢花の感触が蘇るばかり……。
「ねえ、遼。キスして?」
言われるがままそっと額にくちづけると、不満気に彩乃が眉をひそめる。
「そこじゃなくて、唇に」
「それは……無理」
キスを拒めば、彩乃は寂しそうに小さく息をついた。
「遼の方から唇にしてくれたこと、ないよね」
そう言われても、本気ではないという意思表示だから当然のことだった。
服を着ようと起き上がったとき、彩乃がこちらに背を向け肩を震わせていることに気づいた。
「どうした? 最近不倫相手とは会ってないの?」
「……あの人とはとっくに終わってる」
振り返った彩乃の瞳から、涙が一粒零れた。
彩乃と知り合ったのは、大学時代の友人の繋がりだった。
「遼……遅い、待ちくたびれたよ」
リビングに入るなり、彩乃は俺の腰に腕を回し強く抱きついてきた。
棚の上に飾られた時計の針は、もうすっかり深夜を示している。
「ごめん。さっきまで来客があったから」
「もしかして……あの子?」
「……まあね」
俺の手は彩乃の長い髪を撫でているのに、心はそこには存在しない。
彩乃の唇を首筋に感じながらも、紗矢花の潤った柔らかな唇と重ねていた。
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紗矢花を中途半端に知ってしまった自分の体はもう、彩乃では満たされなくなっていた。
ベッドの上で仰向けになり天井を見上げる。
ただ虚しさが残るばかりで何も癒されない。紗矢花の感触が蘇るばかり……。
「ねえ、遼。キスして?」
言われるがままそっと額にくちづけると、不満気に彩乃が眉をひそめる。
「そこじゃなくて、唇に」
「それは……無理」
キスを拒めば、彩乃は寂しそうに小さく息をついた。
「遼の方から唇にしてくれたこと、ないよね」
そう言われても、本気ではないという意思表示だから当然のことだった。
服を着ようと起き上がったとき、彩乃がこちらに背を向け肩を震わせていることに気づいた。
「どうした? 最近不倫相手とは会ってないの?」
「……あの人とはとっくに終わってる」
振り返った彩乃の瞳から、涙が一粒零れた。