雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~
「いつの間にか、あの人を忘れて。また遼を好きになってた。だけど、遼はまだあの子のことが好きなんだね」
「……」
「私、あの人と別れたのをずっと隠してたの。あなたを繋ぎ止めておきたかったから。初めはあの子の代わりでも、遼のそばにいられるから満足してた。でも……私を見ていない遼に抱かれるのはもう無理だった」
彩乃の言葉を無視し、服を身につけ始める。
「私じゃ、ダメなの?」
「……僕は。紗矢花を忘れるまで、誰かと付き合う気はないよ」
彩乃には自分を見せていない。
どうせ元々うわべだけの関係なのだから、見せる必要もなかった。
職場での浅い付き合いと似たようなもの。
「私だって、遼を忘れられない」
「――じゃあ、もうこの関係は終わりにしよう」
冷たく言い捨て、彩乃の部屋を後にする。
切ない嗚咽が途切れ途切れに聞こえてきたが、一度も振り返りはしなかった。