☆彡Night and day『廼斗』☆彡〜悩んでナイト〜
「タクシー」


 手を挙げて乗り込んだ車内で、厳は大きく溜め息を吐いた。


それは毎日遅くまで働かなければならない辛さからでもなく、仕事の重責感からでもない、高校2年生として極ありきたりの恋の悩みだった。


「俺の顔がもっとまともだったら、お嬢様の見る目も違うんだろうに」


 しかし彼らにはそれ以上に、主従の越えられない壁が有る。


「お兄ちゃん。男は顔じゃないぞ?」


 剰りに暗い顔をしていた厳を気遣って、運転手がルームミラーを見ながら声を掛けてきた。


「ああ、そうだよな。解ったよ、有り難う」


 美し過ぎる美麗との間に通用する問題ではないとも言えず、厳は作り笑顔で返して、またひとつ大きな溜め息を吐いた。


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