さよなら異邦人
「加瀬、ちょっと職員室まで来てくれ」

浮かない気持ちで帰り支度をしていた僕を、担任が呼び止めた。

職員室に入ると、担任が自分の引き出しから一通の手紙を取り出し、それを僕に差し出した。

「影山のご両親から、お前宛だ」

「リカコの?」

「読むなら、家に帰ってからの方がいい」

里佳子本人からではなく、彼女の両親から……

僕は、その手紙が決して喜ばしいものではないと悟った。

軽く一礼して職員室を出ようとしたら、

「クラスの他の者には、内緒にしておけ。いいな」

と言われた。

「先生……」

「何だ?」

「ほんとは、リカコの病気、なんなのか知ってんでしょ?」

質問の答えは返って来なかった。

それは、知っているという意味に他ならない。

学校を出る時、僕はクラスの連中と顔を合わさないように、裏門から出た。そして、いつもより遠回りしながら駅へと向った。



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