さよなら異邦人
父親が年中仕事を変える家庭って、そうそう無いと思う。

小学校の頃からいろんな人に、

「君のお父さんはどんな仕事をしているの?」

と聞かれるのが嫌だった。

だって、その時は、

「レストランでコックやっています」

と答えて置きながら、一ヵ月後には、

「露天で達磨を売ってます」

なんて答えなきゃならないんだから。

そういった事が重なって、中学の二年生位から反抗的になったのかなとも思うけれど、かと言って父の事が嫌いという訳では無い。

パッと見なかなかのイケメンだし、多分その辺のおじさん達に比べたらファッションセンスとかも全然いけてる方だ。

話す内容だって、僕なんかより十代の女の子と太刀打ち出来てるし。

そんな僕の父である龍之介は、今年で五十三歳。

現在、恋人募集中。

それもかなりの本気モード。

一人息子として、物心付いた頃から一緒に暮らしている僕の名前は……

言いたくない。

本気で自分の名前が好きじゃないから……






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