好きとは言えなくて…
「あたしから竜貴君を取らないで下さい。やっと、やっと…両想いになって付き合うことが出来たんです。だから…」


市川さんは物凄く焦った様子で私に訴えかける。


それは私に言ってもしかたないのでは？ だって私が奪うにもずっと前から佐倉君は市川さんが好きなのだから。
それにしても取るなって佐倉君は物じゃないんだからさ。


私は一度深呼吸をして市川さんに向かい会う。


「お言葉ですが、私と佐倉君はただ小中学校が同じだっただけです。なので貴女が思ってるような関係じゃないです。それに佐倉君はずっと前から貴女が好きだったんだよ？
その気持ちは嘘だとでもいうのですか？」


「そうだけど。でも…」


市川さんはまだ何かあるのか私にそう言い淀む。


告白されたのになんで不安がるのか…。


「でもってまだ不安な事があるんですか？」


「じゃあ、なぜ貴女は辛そうな顔なんですか！？」


辛そうな顔？ 私がそんな顔をしてたの？
市川さんに言われて初めて気づいた。だって私は冷静に話してるものだと思っていたのだから。


そして私の胸はズキズキと痛みだした。


「あれ？ どうしたの？
二人って知り合いだったっけ？」


今の雰囲気をぶち壊すような穏やかな声がして私はその人の声に反応するように顔を上げた。





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