好きとは言えなくて…
顔を上げるとそこには佐倉君が立っていた。


「竜貴君!! 今そこで会ったの。ねぇ、最上さん?」


市川さんは慌てた様子で私に話を降る。


きっとさっきの話を佐倉君に聞かれたくないのだろう。
そりゃあ、誰だって嫉妬してる所なんて見られたくない。それが好きな人だって言うなら尚更だ。


「うん。さっき私がハンカチ落としちゃって市川さんが拾ってくれたの。
それでまだ電車の時間じゃないから少し話してたんだ。
それにしても可愛い彼女じゃない」


市川さんの話に乗りながらも佐倉君の肩をバシバシ叩きながら笑った。


本当はこう言うことを言いたいんじゃないけど、彼女の市川さんがいるのにそれ以上は不粋な事は出来ない。



「じゃあ、そろそろ電車が来る時間だから先に行くわー」


私は再びニッコリと笑いながらその場から離れた。

その時に私を呼ぶ声がしたけど市川さんの『行っちゃ、やだ…』という声が聞こえたので市川さんが止めたのだろう。



私、ちゃんと笑えたかな?


改札口を通りながら瞳から流れる涙を拭うことなんて出来なかった。



消したいのに消えない気持ちはまだ続いていた…




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