本の姫君と童話の王子様。
「お兄ちゃんのお話、すごく面白かったよ! 特にね……」

満面の笑顔で感想を言ってくれる妹。

「あ、そうそう、お兄ちゃんのお話あやちゃんやゆうくんも面白いって言ってたんだ! ホントだよ~?」

いつか、そう言った妹に連れられて会った妹の友人たち。

僕の話を読んでくれる小さな読者たち。

「お兄さん! お兄さんの話読んで、ぼく、もっとモノを大切にしようと思ったんだ!」

「お兄さんのお話…悲しかったけど、お母さんやお父さんに『ありがとう』って沢山言おうって決めたよ。 あとでコーカイしないために」

素直な感想がとても嬉しかった。

彼らが僕の書いた物語を読んで笑ってくれて、
大切なことに気が付いてくれて成長していく。

なにか1つ、どんなに小さなことでもいい。
人に与えることができればいい。
僕はそれを望んでいた。

誰かの大きな目標にならなくてもいい。
僕はちっぽけで、でも記憶の、心のすみっこに引っかかる程度の大きさの、こんな話を前に読んだなぁって感じでふっとした瞬間に思い出してもらうぐらいの存在の話が書きたかった。

思い出してもらえるということは、覚えてくれているということだから。

誰かの現在の笑顔と成長、未来の思い出と教訓になれれば僕はそれでよかった。

つまり、僕は誰かを支えたかった。


なんでその望みを叶える手段が童話作家なのか。

それは…童話には夢が沢山詰まっているから。


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