〖完〗子ども警察官の精華
 家に着いても、悪循環は続く。

 御船一家は帰っていなかった。

 いないことを確認して、ソファーに座って泣いた。

 運命から逃げられずに、悔し涙を流した。

 涙を流しながら、事件を記録したノートを、ひたすら投げては拾ってを繰り返した。

 もう、心の中は今日一日でぐちゃぐちゃになった。

 そして、いつまでも消えない心の傷となっていく。


 どれくらい泣いたのかは見当つかない。


 御船一家が帰ってきた。

 精華は慌てて涙をふき取った。


「ごめんね。遅れちゃって。ダーリンが、火災現場に立ち会っていたから。
落ち着いたら、話があるからね。」

 奥さんの優しい声が、精華の心に矢となって突き刺さる。

 聖名子のかわいい顔も、当てにならない。




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