【完】ポケット-幼なじみ-
静かな保健室に
ミーンミンミンミーン
と窓の外からセミの鳴き声が
聞こえて改めて夏だなと
感じさせる。
「……………………ちなつ。」
と私は口を開きはじめた。
「…………え?」
「聞きたいことがあるの」
ひらひらとカーテンが風で揺れる
真っ直ぐに千夏を見つめる
「ねぇ、千夏……いつから嫌がらせされてたの?」
「なんでそれ……」
千夏の大きな瞳が、ゆれる。
「どうして…教えてくれなかったの?」
「そ…れは………」
千夏が私から目をそらす。
「なんで千夏はいつも…そうやって一人で抱え込んじゃうの?
………そんなに私のこと信じてなかったのかな?」
「違う!」
千夏の声が保健室に響いて
ピタッ、とセミの鳴き声も止んだ
「あたしは……ただ……あゆに迷惑かけたくなかった。」
そう言う千夏の瞳から綺麗な雫が落ちていく
「―――――――千夏…。」
そんな千夏を見て何も言えなくなってしまう自分を悔やむ。
今、思えばどうしてあの時――
聞かなかったんだろう―――?