薔薇色の人生
汗だくになりながら登りきると『よく来れたな。エライエライ』と言いながら僕の頭をなでた。『あのですね、僕は君より年上ですよ。子供みたいな扱いはやめてもらえませんか。それに一応男ですからね』と冗談まじりに話したつもりだったが『そうだよな…ごめんな。自分はそんなつもりはなくても誰かを傷つけてる事が多いのかもな…』と、しおらしいお言葉。いつもの破天荒な様子とだいぶ違う。『何かあったんですか?僕で良かったら話を聞きますよ』と下を向いている優子さんの顔を覗き込む様に声をかけてみた。優子さんは肩を震わせ、おえつを漏らしながら泣いている様だ。『優子さん、今日初めて池谷さんをデートに誘えました。優子さんに叱咤激励していただいたお陰で勇気が持てたんです。今度は僕が優子さんの力になりますので泣かないで下さい』暫くジッとしていたが気持ちをふっ切る様に顔をあげ、月を見ながら一つ大きく息を吐いた。すると急に顔をこちらに向けて『ば~か。何でもねぇよ』と猿の様に岩を降りて車に乗り込んでしまった。僕も降りようとすると、エンジンをまわし車を運転して牧場の方角に走り出した。僕は慌ててしまったのが不幸の始まりで、足を滑らせておしりをしこたま強打してしまった。そんな事も知らずに車はテールランプの灯りだけ残して行ってしまった。なんてひどい人だ。僕は仕方なく痛いおしりを撫でながら月夜の山道をトボトボと歩きだした。
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