したたか舌打ち、ジメジメいじめ

悪口がひたすら教室を埋め尽くすと、もはや空気には酸素よりも悪口分子が多いかもしれない。


『あーあ、私さー、女子んイザコザより、実はいかに掴みはOKなネタを探すかに必死なんだけど?』

ご主人は、好きな人を前にできても会話のきっかけがないのだと続ける。

――そう、珍しくご主人は相方にカマをかけたんだ。

彼女は彼女なりの歪んだ【“八方美人に振る舞うルール”を、いつだって守っている】から、

愚痴や不満、マイナス発言を言いたい時は我慢して、いつも【負の言葉は飲み込んでいる】人だ。


だから大きな声では言えない腹黒い話だけど、間違ってもそんなご主人が学校での不満な話をクラスメートにするはずがない。

些細な意外性に俺は興味を持った。

だって、《愚痴るとモテなくなるー》が口癖のご主人が、だぜ?

びっくりしたよ、だって普通のご主人なら、せいぜいバイト先の女子大生に、

『私ん組って悪口凄いんですよー、私ってば知らんぷりしてるからヒーローのオファー来ないですよねー』みたいに、

テリトリーが違う人に、文句を軽く笑いながら言う程度なのにさ。



なあ、こんな風に普段マイナスなイメージだと楽だよな。

例えばいつも授業中に昼寝をしていて、たまに起きていたら先生は褒めてくれる。

逆に普段真面目な人が一瞬でも手を抜くと、たるんでいると咎められることが多い。

人間って何かとめんどくさいね。煩わしいったらない。

【自分らしさに自分の意志なんてゼロ。他者からのイメージの中で生きている】って、

クラスメートの悪口マスターどもは分かってるのかな?



そして、相方は言った。

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