もう一つの甲子園
時計は深夜1時になろうとしていた。

「タカ、そろそろ降りよう」

「そうだな」

二人がエンジンをかけようとした時だった。

山の中にエンジン音が響き渡り近付て来るのがわかった。

「タカ、来た!この音だ!」

二人はバイクに飛び乗りエンジンをかけた。

「雅人、お前はまだ慣れてないから無理すんな!」

雅人はオッケイと拳を握り親指を立てた。

このコーナーが一番スピードが落ちる、432がコーナーを出る瞬間が勝負だ。

一瞬ガードレールが照らされた。

来た!雅人行くぞ!

ゴォーーー432が直線に出た瞬間二人は発進した。

龍二はバックミラーの二つのライトに気付いた。

「なんだ?バイクか?、ガキ共が432に挑戦か・・・」

龍二は暇つぶしにからかってやろうと思った。

わざとスピードを落とし左に寄りながら右手を出して合図した。

タカと雅人は躊躇せず前回で追い越した。

二人が次のコーナーに差し掛かる前に432は咆哮をあげた。

「兄さん、兄さんの432は誰にも負けない」

432はホイールスピンをしながら猛ダッシュで発進した。
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