もう一つの甲子園
「麗奈!」

「沢田君、久しぶりね。また、貴方と走れるとは思わなかったわ」

「俺と?今日はもう乗らねーよ」

「あら?だったら私が来た意味がないじゃない」

「タカ!お前乗れ!」

沢田はそう言ってモンスターZ2の鍵をタカに向って投げた。

「ええーっ!俺っすか?」

タカは驚いてタコおやじに聞いた。

「おっさん、俺が乗っていいの?」

「転んだら、ぶっ殺すけどな」

タカとタコおやじが押し問答していると

「タカ!行くよ!」

麗奈はGTRに乗ってアクセルを吹かし始めた。

ブォーン!ブォーン!

初めて乗るモンスターZ2にタカの心臓は高鳴った。

「タカ転ぶんじゃねーぞ!」

雅人の声に返事をする余裕もないタカだった。

クラッチを握り、チェンジを入れてスタートの瞬間が一番緊張する時だ。

タカはミートする所を探しながらゆっくりクラッチを繋ぎヨンフォアと同じようにスロットルを開けた。

ゴォーーーという爆音と共にZ2の前輪が浮いたまま発進した。

「おおーっ」とタコおやじ、沢田、雅人は驚きと心配の入り混じった歓声を上げた。

ウィリーしたまま10m程進んで前輪が着地した。

その後を追って麗奈のGTRが激しいホイルスピンで路面から煙を上げて発進した。

「おおーっ」とタコおやじ、沢田、雅人はタカの時とは違う歓声を上げた。

直線が終わり左コーナーへ向かいながら、タカは

「ヤバイ!ヨンフォアの加速と段違いだ。ヘタしたら死ぬな」

緊張しながらブーレーキをかけるとシューーーとフロントから音がして体が前に持って行かれそうになる位の制動を見せた。

しかし、緊張の中でタカの天性の勘が働き始めた。



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