もう一つの甲子園
麗奈の名詞の肩書きには・・・

「WIZARD racing team マネージャー!なのっ?麗奈さん?」

タカは名詞を見てびっくりした、WIZARD racing teamと言えばメーカーを相手に一歩も譲らない知る人ぞ知る有名なプライベートチームだったからだ。

「いいんですか、おやじさん」沢田がタコおやじの耳元でボソッと言うと

「沢田も見ただろ、タカの走り」

「はあ、ヨンフォアの時は早く無いっけど」

「それよ、ヨンフォアを乗ってる時は転ばないように大事に乗ってるからな。つまり守りに入ってるって事よ」

「それが、おやじさんのZ2に乗った時に攻めの走りに変わった」

「その通りだ。沢田。キレた時のタカの走りはデタラメだ。セオリーも何も有ったものじゃねぇ。それなのに麗奈の乗るGTRを負かしてしまった。タカの走りは理屈を超えている」

「それじゃ、みすみす麗奈にタカを持って行かれないほうがいいんじゃないですか?」

「いや、そうじゃない。タカがキレた時は確かに早い。しかしこのまま峠を走り続ければタカは・・・・確実に死ぬ!だから、そうならないように麗奈に預けたのさ」


「確実に死ぬ?ってどういう事ですか?」

「俺はタカの走る後ろ姿に死神を見た。昔、俺の友人だったレーサーと走りがダブルのよ」

「それって、数年前に死んだ・・・・」

「ああ、やつは凄いと言うより・・・やはり理屈を超えて早かった。レース界では小さな巨人と呼ばれていた。日本にキングと呼ばれた世界チャンピオンがやって来た時にも、やつは負けなかった!いや2ヒート制(2回走って勝ち負けを決める事)での1ヒート目は勝った。2ヒート目もトップを走りながら勝利目前という時に、惜しくもマシントラブルでリタイアしてしまった。しかし日本人で世界チャンプのキングに勝ったのはやつが最初だった。その、やつの走りとタカの走りには同じ臭いがする。だから、危険な峠なんかで走らせる訳にはいかねーのよ」

< 40 / 43 >

この作品をシェア

pagetop