好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

そりゃあ、怖いだろう。


告白したって、その想いが届くとは限らないんだから。


私にも、その気持ちは痛いくらいに分かっている。


でも。


「大丈夫だよ。きっと伊藤君だって、ハルカのこと嫌いじゃないって、ほら、行ってきな!」


ポン!


と、私は、空色の浴衣に包まれた華奢なハルカの肩を、励ますように押し出した。


「うん!」


ハルカが、満面の笑顔で頷く。


「玉砕覚悟で行って来るね!」


「頑張れ、ハルカっ!」


大きく振った手の先で、


まるで今の私の心を映すみたいに、左右に揺れた水風船が、バシャバシャと水音を上げる。


――伊藤君。


伊藤君なら、きっとハルカに特上の笑顔をくれる。


ぶっきらぼうに見えても、本当は優しい人だと知っているから。


きっと、ハルカは、幸せになれる。


だから私は、笑顔で「おめでとう!」って言うだろう。

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