好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

「佐々木――、亜弓ちゃん!」


とぎれがちな意識の下。


微かに、誰かが自分を呼ぶ声が、耳に届いた。


優しい響きを持った、落ち着いたトーンの声には、聞き覚えがある。


――ああ。


伊藤君の声だ。


「ほら、口を開けて」


口元に、ヒンヤリと硬質のものがあてがわれて、私は反射的に口を引き結んだ。


「佐々木、少しでもいいから、飲んでくれ。ほら、口を開けて」


「……っう……ん」


助けを求めて声を上げようとするけど、


痛いほどに乾いた喉が掠れたうめき声を吐き出すだけで、言葉にならない。


止めどなく流れ落ちる涙の粒が、気休めに熱を奪って、灼熱する頬を伝い落ちる。


その頬に、ヒンヤリとした指先が触れて、涙の跡を優しく拭っていく。

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