好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

久しぶりに足を踏み入れた十二畳の和室は、記憶の中にある部屋の様子と、ほとんど変わりがなかった。


シンプル・イズ・ベストの、味気なさ漂うモノトーンの室内。


壁際に置かれた、セミダブルのベッド。


その脇に置かれた片袖机は、中学の入学祝いに、家の父が送ったものだ。


壁際の本棚には、相変わらずの漫画と、サッカー関連の雑誌が乱雑に突っ込まれている。


目新しいものと言えば、カメラ関連の指南書とか、写真集の類の本が増えていることくらい。


「ったく、成長がないやつだ」


ボソリと低い呟きを漏らして、鋭い視線で部屋の中を見渡すも、肝心の本人の姿が見えない。


「浩二、いるんでしょっ!?」


大きな声で呼んでみるけど、返事はこない。


……気配を察して、逃げたんじゃないでしょうね?


見つけたら、向こうずねに二・三発、蹴りでも入れてやらなきゃ、気が収まらない。


「浩二!?」


ツカツカと、押入れに歩み寄り、襖を勢いよく開ける。


が、さすがに、ここには隠れていない。

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