好きだと、言って。①~忘れえぬ人~


直也のご両親に会うことをダシに使うようで、ちょっと気が引けたけど、


電話でそのことを伝えたとき、ハルカは『気にしないで、頑張ってね!』と言ってくれたし。


ここはもう、全てを忘れて、目の前の大きなイベントに全力投球しなくちゃ!


そうと決まれば、何事も、初めが肝心。


ここで頑張って、『良い嫁』のイメージを作っておけば、後がらくちん♪


と言うのは、本音が半分入っていたりする。


「それにしても……」


礼子さんが、頬杖をついてチロリンと、私に意味ありげな流し目をよこした。


「はい?」


「本当に、結婚しちゃうのねぇって思ってね」


まるで、


娘を嫁に出す母親のような口振りで、しみじみ言う礼子さんに、私は「はい」と会心の笑みを向ける。


実家から帰った夜。


直也の腕の中で、私は、心を決めた。


直也と結婚して、一緒に生きていこうって、そう心に決めた。


だから。


もう、迷わない――。

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