好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
「正直言うとね、亜弓と篠原さんが結婚まで行くとは思ってなかったのよ、私」
「はっ!?」
な、なにを言い出すんですか、礼子さん!?
まさか、そんなセリフが礼子さんの口から出るとは思ってなかった私は、すっ頓狂な声を上げてしまった。
スッと一瞬だけ周りの視線が集まり、思わず『アハハハ』と愛想笑いを振りまく。
「ど、どういう意味ですか?」
動揺しまくりの私は、礼子さんの方に身を乗り出して、声をワントーン落とした。
「だって、亜弓って、本命の男他にいるでしょう?」
『本命の男が他にいる』
その言葉に、ドキン――と、鼓動が大きく跳ね上がる。
『ん?』と、伺うような瞳で顔を覗き込まれて、
私はどういう表情をして良いのか分からず、引きつった笑顔のまま能面のように固まった。
な、なんで、礼子さんが伊藤君のことを知ってるの?
ってか、知ってるワケがない。
だって。
私は、この気持ちを、誰にも話したことがない。
唯一例外は、浩二のバカだけだ。